安テキーラでヒドイ目にあった - 被害者:宏実
メキシコシティーから出発する日の前夜のことだった。
宿の仲間達と最後の酒盛りをすることになって、いろいろご馳走になった。
メキシコの酒といえばコロナビールとテキーラが有名だ。
しかし本物のテキーラは結構いい値段がするので、
庶民はコンビニで売っている安テキーラを買ってきて飲む。
この安テキーラ、なにから作られているのかわからないが壮絶な悪酔いをする。
一緒に飲んでいたKさん(安テキーラを買ってきた人)は、
2時を過ぎたあたりから10秒前に自分が言ったことも忘れ、無限ループ状態。
バリ島のお勧めスポットの話や、強盗にあった話など、それぞれ10回くらい教えてくれる念の入れよう。
僕は酒が強くないのでチビチビと、あまりたくさんは飲まなかったが、
宏実はどんどんコップに安テキーラを注がれて、かなり飲まされていたようだった。
翌日の出発は朝7時の予定だったのに、朝の4時過ぎまで酒宴は続き、倒れるように部屋に戻って寝た。
7時に起きた時点で宏実の体調は最悪。頭痛に吐き気にだるさと見事な二日酔い。
宏実にとって地獄の一日が始まった。
必死に這うようにしてなんとかバスターミナルまで辿りついたが、
バス代をケチってローカルバスのチケットを買ってしまっていたため、
快適ないいバスに乗るという選択肢はこのとき僕らの頭にはなかった。
半日かけてガタガタと悪路をゆっくりと進み、時々乗客の乗り降りで停まるバス。
これほど二日酔いのときに乗りたくない乗り物は珍しいが、僕らは乗った。
哀れな宏実はバスの揺れ一つでもひどい頭痛に、停車するたびにひどい吐き気に襲われていた。
僕はというと、昨晩それほど飲まなかったこともあり、元気ピンピン。
「いまバスの運転手がかけている曲がいい」などと空気の読めない発言を連発し、宏実の苦痛を加速させていた。
日も暮れかけた頃、ようやく目的地に瀕死の状態でついたが、そこから知らない町で小一時間宿探しをしなければならず、
体調が悪いときの移動の辛さを初めて知った一日だった。
後日談:安テキーラをガンガン飲んでいたKさんは、翌日目があかないほど腫れたそうです。安酒は怖いね。