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ボリビアの病院はすごかった - 被害者:源平

皆さんは病院というとどういうものを想像するだろうか。

つるりと光沢のある床、消毒の匂い、順番を待っている患者の人達など…

人によって様々なイメージがあると思う。

しかしひどい腹痛で苦しむ僕を迎えてくれたのは、

まるでバイオハザードかなんかみたいな病院だった。

なぜ腹痛になったのかだけど・・・

僕らは湿地帯ツアーに参加するため、ボリビアの首都ラパスから

15時間ほどかけてアマゾンの村、ルレナバケまで長距離バスで移動していた。

その途中で寄った休憩所で食べたサラダに当たったんだと思う。

不潔そうな店だったし、他に生のものは口にしてないから。

深夜2時ごろ、急に刺すような痛みが腹部に走るようになり、

痛みは次第に強くなっていった。

明け方頃になるとついに便意もやってきた。

ボリビアのバスには一応トイレがついている。

トイレ付きなら大丈夫かと思われるだろうが、付いているだけでドアが開かないのだ。

多分バスの職員的に、掃除が大変だから封印しているのだろうと思うが、

実質トイレがないバスなのに、休憩所にも寄らない。どうしろというのだ!

そうなると仕方がないので、我慢ができなくなったら運転手に、止めてくれ!と頼むしかないのだが、

大概イヤそーうな顔をされて、

「もうすぐ着くから待て」

と言われる。

この場合の"もうすぐ"は、運転手によって30分〜3時間くらいまで幅があるので、

日本人の感覚の"もうすぐ!"の感じで待っているようでは、ボリビアの長距離バスでは生き残れない。

運転手の助手なんて

「死にそうなのか?死にたくないのか?」

なんてニヤニヤしながら小一時間同じ質問を浴びせ続けてくるし、

どこでもいいから5分停まってくれればいいのに、

「死にたくないから止めてくれ」って言っても止めてくれない。

あやうく生き残れないところだったが、2時間ほど待たされて、ようやくトイレのあるバス停へと辿りついた。

ボリビアのバスは便意や尿意を催した人には容赦がない。

やっと辿りついたルレナバケの村でも刺すような腹痛は治まらず、

一日中トイレでうなっているか、ベッドの上で丸まっているかの状態。

これはまずいということで、バイクタクシーに村の病院まで連れて行ってもらったのだが、

そこがバイオハザードみたいな病院だった。

窓ガラスは割れてるし、床にはモノが散乱していて壁とかもちょっと崩れてるし。

しかも電気がついてないから昼なのに薄暗い・・・なにこれ・・・

受付にも誰もいないし、人気がないから誰もいないのかと中へ入っていくと、

診察室の中でグッタリした子供を抱いて叫んでる女性がいたり・・・

ホラーテイストがハンパないが、こっちも必死なので怖がっている場合じゃない。

痛む腹をさすりながら、先生を探して歩き回っていると、

「どうした?」と急に声をかけられ、そっちを見ると普通のおっさんが立っていた。

普通のおっさんというのは、普通のシャツを着て、

小太りでちょっと汚いジーパンを履いてるサンダルのおっさんだ。

「具合が悪くて医者を探してるんだけど」というと、診察室に入るように促された。

「え?このおっさんが医者なの?掃除のおじさんじゃないの?」と

ものすごく不安が渦巻いたが、こっちは病弱の身、言われるままにすることに。

どうみても掃除のおっさん風のその医者は、適当に僕の話を聞いて

「これとこれとこれ飲んどきゃだいたい治るから、治らなかったらまた来て」と

3種類の薬の処方箋をかいて渡してくれた。

それからおっさんと診察室を出て行き、おっさんに見送られながら病院をあとにした。

病院を出て薬を買っている時に気がついたけど、病院ではなぜか料金は一切請求されなかった・・・。

結局言われた薬を飲んだらたちどころに回復し、無事にツアーにも参加することができた。

しかしあの病院は本当に存在したのだろうか・・・?

確認していないが、もう一度あそこへ行ったら、病院なんか最初からなくて原っぱかなにかになっている気がする。

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